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2012-05-21 [愛スル人タチ]

先週、お世話になりましたご挨拶まわりを済ませて、小銭しかねーけれどもと、あたくしのアイドルのところに寄ったんさ。
ちょうど話の長いことで有名なおば・・もといかつてはお嬢さんにつかまっていて、店の外からしばらく様子見をしてたのだけれども、
まぁこれは困っておるねどう見てもねと「こんちああああ」と空気裂き裂き入っていったのね。
あたくしの胸までしかない位置で、輝く銀髪が上ったり沈んだりしながら近づいていらっしゃるのね。腰がお悪いもんで。ほぼくの字でお進みになるもんで。
それでもあーた、米寿超えても朝の四時から焼き釜の前で働かれるんですよ。
ショートニングたっぷりの冷凍生地焼いて、焼きたて焼きたて宣う店も闊歩するなか、毎朝ふくらかしてご自分で焼かれるですよ。
甘みも見た目の素っ気もないコッペパン型のフランスパンなんですが、家でトーストなりオーブンで温めるなりすると、なんとも香ばしくて、ぎゅむぎゅむ噛むほどに美味くて、顎を鍛えて食事をすすませるパンなんです。うちでご飯食べる友人たちは、なんだこのパンあまり味がしねぇなという反応を見せる向きがほとんどで、これ、美味しいパンだねぇと最初からしみじみした人は一人しかいなかった。実はあたくしもそうだった。このちっこい1本で工場産バゲットの大きいのが買えると。んだけども、二度三度いただくと、最初からここのパンは旨いと思ってた風の顔してもんぎゅもんぎゅするのね。
「アイドルがいなくなったら、もう食べられなくなるノ。だからできるだけ毎日買いに行くノ」。そう、強迫観念のようによく云ってたもんです。

その週の末、雨が降っても槍が降っても開くその店のドアが閉まっているのを初めて見て。
いやーな予感がして、今日、お世話になるかもしれませんです宜しくお願いしますです挨拶の帰りに寄ってみたら、パン生地みたいに肌理の細かい肌のお嬢さんが店頭に出ていた。
「お婆ちゃん、もしかして」「ええ、そのもしかして」
店の厨房で作業しながら、ドスンと倒れたそうだ。幸い、娘さんが休憩にあがる直前だったから、すぐ救急車を呼べたそうだけれども。
「あの人も人生丸ごと仕事をしてきたから、ねぇ。ずーっとやってきたことをあの歳で左手でどうにかできるかって、ねぇ」。
・・って。ねぇ。
パンを掴んだ、ら、「ああ、もう夕方ですから、半額でいいですよ」といつもの声が聞こえてきそうで、店内で視界が滲む。
RIMG0042-2.jpgこの春、大ぶりの木瓜を実家の母と彼女に贈っていた。
今度のお世話になります話が確定して最初のお給金がいただけたら、なんの花を贈ろう。
冷凍室に買い置いたそのひとのパン7つ、ちびちびと食べきるころには、明るい話ができるとよいのだけれど。

最後の責了が済んで、ほっと息つくのを待ってくれていたのか、メインで使っているマザーボードが逝く。
デュアルモニタで動かしている並列機も反応しないので、こりゃいったん分断させねばなぁと、のたくる配線に半べそ。
コマンドもブックマークもファイルもまた最初からいくらでも打ち直せる。また探せる。生きてさえいりゃぁ。


夕刻、「昨日の春キャベツ、中身ワヤだったよぅ」のブーイングと現物ぶら下げて八百屋に寄ったらば、
夏のセーラー服に学校鞄を提げたショートボブの女の子が新ジャガを選んでいて。
プリーツスカートからすらりと伸びた美しい脚に、正しく穿いたソックスが眩しくて。八百屋店頭の夏のセーラー服は詩的ですらある。
彼女のうなじから初夏の風が吹くような清潔感にしばし見とれていて、ああ人生はほんとうに四季なのだなぁと思った。
代わりのキャベツをぶら下げて帰る道々、街角はどこも祭りの準備真っ只中。
三年に一度の大祭は去年の予定だったが、今年に持ち越された。「あなた、今年は担げばよろしいのに」と品良く微笑むご婦人は、前回「ババァはさがってろ」と口走った対岸町の嬢ちゃんに間髪入れず、「誰でもすぐババァになるんだヨ、このバカタレが!」と雌獅子担いでいなし、隙あらば入り込まんとする顔に斜め線のにーちゃんらを軽く蹴散らしていた。わはは。普段冗談も云わないひとも割ってきて、9日の刺身の振る舞いは相当期待できるよ、おいでなさいよと勧めなさる。このみなちょっとずつ高揚して人なつこくなる光景が、下町の初夏。
残念。あたくしの今年の祭りは、もう一人の黒衣のアイドル三連夜のその日。今年の御霊は五反田にあがる。

酢締めがきつすぎたニシンを卯の花でごまかしつつ、夜半。
というわけで諸兄諸姉友人各位、ディスクがアウト、デスクトップ一切合切、メールも救出できずにおります。業務関係の怒号叱責および憐憫の情はウエブメールアカウント宛てか携帯電話(旧式ザクもザクなので、250字以内にて宜しぅ)か、下記投書箱よりお寄せください。ひらにひらに。
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